安息日の礼拝  創世記の真相

創世記37章




37:1-4
 ヤコブは、父がかつて滞在していたカナンの地方に住んでいた。
ヤコブの家族の由来は次のとおりである。ヨセフは十七歳のとき、兄たちと羊の群れを飼っていた。まだ若く、父の側女ビルハやジルパの子供たちと一緒にいた。ヨセフは兄たちのことを父に告げ口した。
 イスラエルは、ヨセフが年寄りの子であったので、どの息子よりもかわいがり、彼には裾の長い晴れ着を作ってやった。兄たちは、父がどの兄弟よりもヨセフをかわいがるのを見て、ヨセフを憎み、穏やかに話すこともできなかった。

 
ヘブライ語原典では「さてヤコブは、彼の父の逗留の地であるカナンの地に住んだ。これがヤコブの系図である。ヨセフは17歳の年齢になり、彼の兄弟たちと共に羊の群れを飼っていた。彼は若者だったので、ビルハの息子たちや、彼の父の妻ジルパの息子たちと共にいた。ヨセフは彼らの父の所に、兄弟たちの悪い噂を持って来た。
 さてイスラエルはヨセフを、彼の息子たちのすべてよりも愛していた。なぜならヨセフはイスラエルにとって年寄りの息子だったからである。イスラエルはヨセフのために縞模様の長衣(袖付きの長い衣)を作った。しかし彼の兄たちは彼らの父が、彼の兄弟たちのすべてよりもヨセフを愛していることを見た。それで彼らはヨセフを憎んだ。そしてヨセフと穏やかに話すこともできなかった。」です。


 
ヤコブとその家族は、彼の父イサクが住んでいたカナンに住みました。
 ヨセフはヤコブにとって11番目の息子ですが、ヤコブが愛したラケルの長男でもありました。
 この箇所の記載では、レアの息子たちと、ラケル・ビルハ(側女)・ジルバ(側女)の子たちが、ほとんど一緒にいないで別々のグループのようになっていたことが分かります。しかもイスラエル(ヤコブ)はヨセフを可愛いがっていたのですから、レアの息子たちが、ヤコブたちから遠ざけられて結束していたと考えられます。
 新共同訳の「ヨセフは兄たちのことを父に告げ口した」を、キリスト教会は、ヨセフは年老いたヤコブに甘やかされて育ったため高慢な性格に育ち、兄たちを非難するような青年に育った、と解釈するところもあるようですが、ヘブライ語原典では、その「噂(新共同訳では告げ口)」とは何なのかを想起させます。
 その「噂」がどんなものなのかは、書かれていません。35章の、ルベンがヤコブの側女ビルハのところに入って父の床を汚した時も、そのことがヤコブの耳に入ったとは書かれているのですが、そのことがどうやってヤコブの耳に入ったかは記されていませんでした。
 35章と37章の間に、36章のエサウの系図が挿入されていますが、36章をはずして読みつなげてみると、ルベンが父の側女ビルハのところに入ったことがヤコブの耳に入ったことと(どうやってヤコブの耳に入ったか)、ヨセフが兄たちの噂をヤコブの耳に入れたこととが、無関係ではないようにも見えるのです。
 だとすれば、ヤコブは割礼を利用してヒビ人たちを殺したシメオンとレビ、そして側女ビルハのところに入って床を汚したルベンを遠ざけたと考えられます。いずれもレアの息子たちです。ユダはヤコブから遠ざけられるようなことをしていませんが、同じレアの息子たちと共にいたと考えられます。
 そうすると、ヤコブが愛したラケルの子ヨセフと、側女ビルハとその子ら、側女ジルバとその子らが、いつも共にいたことが納得できます。

 ルベンは長男ですから、本来ならば長子権を相続するのはルベンです。ところがルベンは父の床を汚しました。ルベンがそのことで長子権を失ったとしたら、次男シメオンに相続権が移行するわけですが、3男レビと共に割礼の殺戮で父ヤコブの意に背いています。
 側女の子らは、長子権を受け継ぐことはないと自覚していたと思われます。そうすると、ヤコブが愛したラケルの長男であり、ヤコブが溺愛しているヨセフが長子権を継承するのではないか、と兄たちのほとんどは思っていたと考えられます。
 そんな中で、イスラエル(ヤコブ)は、ヨセフに縞模様の長衣(袖付きの長衣)を作って着せたのです。兄たち(レアの子供たち)は、長衣を着せられたヨセフを憎みます。それは兄たちが、長子権を相続するのはヨセフではないかと思って、妬んだものと考えられます。兄たちがヨセフに対して穏やかに話すこともできなかった理由が、これで理解できます。



37:5-11
 ヨセフは夢を見て、それを兄たちに語ったので、彼らはますます憎むようになった。ヨセフは言った。
 「聞いてください。わたしはこんな夢を見ました。
 畑でわたしたちが束を結わえていると、いきなりわたしの束が起き上がり、まっすぐに立ったのです。すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、わたしの束にひれ伏しました。」
 兄たちはヨセフに言った。「なに、お前が我々の王になるというのか。お前が我々を支配するというのか。」
 兄たちは夢とその言葉のために、ヨセフをますます憎んだ。
 ヨセフはまた別の夢を見て、それを兄たちに話した。
 「わたしはまた夢を見ました。太陽と月と十一の星がわたしにひれ伏しているのです。」 今度は兄たちだけでなく、父にも話した。父はヨセフを叱って言った。
 「一体どういうことだ、お前が見たその夢は。わたしもお母さんも兄さんたちも、お前の前に行って、地面にひれ伏すというのか。」
 兄たちはヨセフをねたんだが、父はこのことを心に留めた。

 
ヘブライ語原典では「さてヨセフは夢を夢見た。そして彼の兄たちに話した。彼らは更にヨセフを憎むようになった。ヨセフは彼らに言った『どうか、私が夢見たこの夢のことを聞いてください。ご覧ください。私たちがその畑の真ん中で穂束を束ねていると、私の穂束が立ちました。そして、さらに直立しました。そしてご覧ください。あなた方の穂束が囲み、私の穂束にひれ伏したのです』。
 そこで彼の兄たちがヨセフに言った。『おまえは本当に私たちの上に王となるのか。それとも、おまえは本当に私たちを支配するのか』。そして彼らはヨセフの夢のために、そして彼の言葉のために、更にヨセフを憎んだ。
 ヨセフは更に別の夢を夢見た。そして、それを彼の兄たちに話した。そして言った。『ご覧ください。私はさらに夢を夢見ました。ご覧ください。太陽と月と十一の星たちが私にひれ伏しているのです』。ヨセフは、彼の父と彼の兄たちに話した。そこで彼の父は、彼を叱って言った。『おまえが夢見た、この夢とは何か。私たちが本当に行くか。私とあなたの母、あなたの兄たちが、地に向けてあなたにひれ伏すために。』と。
 それで彼の兄たちは、ヨセフを妬んだ。しかし彼の父は、その言葉を(心に)留めた」です。

 
ヨセフはある日、夢を見て、それを兄たちに話しました。それを聞いて兄たちは、ますますヨセフを憎むようになりました。
 その夢とは、皆が畑の真ん中で穂束を束ねていると、ヨセフの穂束だけが立って直立し、兄たちの穂束がヨセフを囲んでひれ伏した、というものでした。
 それを聞いた兄たちは、「おまえは本当に私たちの上に王となるのか。それとも、おまえは本当に私たちを支配するのか」と言って、以前にも増してヨセフを憎むようになります。
 
 ヨセフはさらに別の夢を見ました。それは太陽と月と11の星がヨセフにひれ伏している夢でした。それを聞いたイスラエル(ヤコブ)は、こう言います。
「おまえが夢見た、この夢とは何か。私たちが本当に行くか。私とあなたの母、あなたの兄たちが、地に向けてあなたにひれ伏すために。』と。
 ヨセフの母ラケルは、既に亡くなっています。ですので、この「母」はラケルが亡くなった後、未成年のヨセフを育てた、育ての母のことを言っているのかも知れません。



37:12-17
 兄たちが出かけて行き、シケムで父の羊の群れを飼っていたとき、イスラエルはヨセフに言った。「兄さんたちはシケムで羊を飼っているはずだ。お前を彼らのところへやりたいのだが。」
 「はい、わかりました」とヨセフが答えると、更にこう言った。「では、早速出かけて、兄さんたちが元気にやっているか、羊の群れも無事か見届けて、様子を知らせてくれないか。」
 父はヨセフをヘブロンの谷から送り出した。ヨセフがシケムに着き、野原をさまよっていると、一人の人に出会った。その人はヨセフに尋ねた。「何を探しているのかね。」
 「兄たちを探しているのです。どこで羊の群れを飼っているか教えてください。」 ヨセフがこう言うと、その人は答えた。
 「もうここをたってしまった。ドタンへ行こう、と言っていたのを聞いたが。」
 ヨセフは兄たちの後を追って行き、ドタンで一行を見つけた。

 
ヘブライ語原典では「さて彼の兄たちはシケムで父の羊の群れを飼うために行った。そしてイスラエルはヨセフに言った。『あなたの兄たちがシケムで(羊を)飼っているであろうから、行きなさい。私はあなたを兄たちの所に遣わそう。』
 するとヨセフは父に言った。『私はここに(はい、わかりました)。』 するとイスラエルはヨセフに言った。『さあ、行け、あなたの兄たちの無事と、羊の群れの無事を見なさい。そして私にそのことを答えよ(伝えなさい)』。こうして彼をヘブロンの谷から(シケムに)遣わした。そして彼はシケムの方に来た。野でさ迷っていたら、見よ、人(イーシュ)が彼を見つけた。それで、その人(イーシュ)はヨセフに『何を探しているのか』と尋ねた。そこでヨセフは言った。『私は、私の兄たちを探しています。彼らがどこで羊を飼っているか、どうか私に教えてください』。その人は『彼らはここから行った。私は彼らが【私たちはドタンの方に行こう】と言っているのを聞いた』。それでヨセフは、彼の兄たちの後から行って(兄たちの後を追って)、ドタンで彼の兄たちを見つけた」です。

 ヨセフの兄たちは、シケムで父の羊の群れを飼うために行きました。イスラエルはヨセフに、シケムで羊の群れの世話をしている兄たちの所に行って、兄たちの無事と羊の群れの無事を見てきて、知らせて欲しいと言い、ヨセフをシケムに遣わしました。
 シケムは、かつてヤコブがエサウとの元がえしを果たした後に、例の「スコト」に行ってから、祭壇を建てた場所です(創33:18-19)。
 ですので、このシケムという場所が既に、将来に来る救世主のことを示唆していることを、併せて読む必要があるのです。
 ヨセフがシケムに来て、野でさ迷っていると、“1人の人”がヨセフを見つけます。ヘブライ語原典で『イーシュ』と記されている“1人の人”は、あのヤコブが夜明けまで格闘した『イーシュ』と同じく、『イーシュ』と記されています。
 『イーシュ』は、ヨセフに「何を探しているのか」と尋ねます。そこでヨセフは「私は、私の兄たちを探しています。彼らがどこで羊を飼っているか、どうか私に教えてください」と言います。『イーシュ』は、「彼らはここから行った。私は彼らが【私たちはドタンの方に行こう】と言っているのを聞いた」とヨセフに伝えます。
 ヨセフは、彼の兄たちの後を追って、ドタンで彼の兄たちを見つけました。ドタンはサマリアの北東の町で、周辺は肥沃な平野が広がっていました。そのドタンで兄たちは羊を養おうとしていたのです。ただ、ドタンはエジプトに通じる隊商の通路でもあったので、異邦人たちが行きかう場所でもありました。イスラエルは、そのことを心配してヨセフを遣わしたのでしょう。

 このことをイエス様の時代を考え併せて読むと、羊を養っているのはイスラエル12部族のうちの11部族の長たちで、ヤコブがそこにヨセフを遣わしたのは、神様がイエス様をイスラエルに遣わすことを示唆しているとも読み取れるのです。



37:18-27
 兄たちは、はるか遠くの方にヨセフの姿を認めると、まだ近づいて来ないうちに、ヨセフを殺してしまおうとたくらみ、相談した。
 「おい、向こうから例の夢見るお方がやって来る。さあ、今だ。あれを殺して、穴の1つに投げ込もう。後は、野獣に喰われたと言えばよい。あれの夢がどうなるか、見てやろう。」
 ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から助け出そうとして、言った。「命まで取るのはよそう。」 ルベンは続けて言った。『地を流してはならない。荒れ野のこの穴に投げ入れよう。手を下してはならない。」
 ルベンは、ヨセフを彼らの手から助け出して、父のもとへ帰したかったのである。
 ヨセフがやって来ると、兄たちはヨセフが来ていた着物、裾の長い晴れ着をはぎ取り、彼を捕えて、穴に投げ込んだ。その穴は空で水はなかった。
 彼らはそれから、腰を降ろして食事を始めたが、ふと目を上げると、イシュマエル人の対象がギレアドの方からやって来るのが見えた。らくだに樹脂、乳香、没薬を積んで、エジプトに下って行こうとしているところであった。ユダは兄弟たちに言った。
 「弟を殺して、その血を覆っても、何の得にもならない。それより、あのイシュマエル人に売ろうではないか。弟に手をかけるのはよそう。あれだって、肉親の弟だから。」
 兄弟たちは、これを聞き入れた。

 
ヘブライ語原典では「さてヨセフの兄たちは遠くからヨセフを見た。そしてヨセフが彼らに近づく前に、彼らはヨセフに対し殺すことを企んだ。そして彼らは、彼の兄弟にそれぞれ(お互い)に言った。『見よ、あの夢の持ち主がやって来る。さあ、今こそ、私たちは彼を殺そう。そして彼をその穴の一つに投げ込もう。そして私たちは(父に)言おう、悪い野獣が彼を食べたと。そして彼の夢がどうなるか見よう』。
 しかしルベンが、それを聞いた。そして彼を、彼らの手から救い出した。ルベンは言った。『私たちは彼の命を撃つまい』と。そして彼らにルベンが、彼らの手からヨセフを救い出すために、ヨセフを父の所へ戻すために、『あなた方は血を流すな。荒野の中にあるこの穴に彼を放り込め。そして彼に手を伸ばすな』と言った。
 そしてヨセフが彼の兄たちの所へ来た時であった。彼らはヨセフが着ている縞模様の長衣をはぎ取った。そして彼らはヨセフを捕えて、その穴の中に投げ込んだ。その穴は空で、その中に水がなかった。
 彼らはパンを食べるために座った。そして彼らが目を上げた。すると彼らはイシュマエル人たちの隊商が、ギレアドからやって来るのを見た。彼らのラクダたちは香料と乳香と没薬をエジプトの方へ運び下るために運んでいた。
 ユダが彼の兄弟たちに言った。『私たちが弟を殺して、彼を地に覆い隠すことに何の益があるだろうか。さあ、私たちはヨセフをあのイシュマエル人たちに売ろう。そして私たちの手を彼にかけないようにしよう。なぜなら彼は私たちの兄弟だし、私たちの肉親なのだから』。そして彼の兄弟たちは(ルベンとユダの提案を)聞き入れた」です。


 
羊の世話をしていたヨセフの兄たちは、ヨセフが来たことを遠くから気付きました。なぜならヨセフは彼らとは事なった縞模様の長衣を父イスラエルから着せられていたからです。ヨセフが彼らに近づく前に、兄たちはヨセフを殺すことを計画し、互いに次のように言い合いました。「あの夢の主人公がやって来る。彼を殺して穴の中に投げ込もう。そして父には悪い野獣が食べたと言おう。ヨセフの夢がどうなるか見ものだ」と。ヨセフを殺すことによって、ヨセフの夢は「たわごと」だったと証明したかったのです。
 しかし、ヨセフの殺害を話し合う兄弟たちの中で、長男ルベンだけはヨセフを救い出そうとしました。そして、ヨセフが兄たちに近づいてきた時、兄たちはヨセフの長衣をはぎ取り、水のない穴に投げ込みました。
 兄たちが食事のパンを食べている時、イシュマエル人たちの隊商が来るのを見ます。彼らのラクダたちは香料(ヘブライ語ではトラガント【灌木】の樹脂、ギレアドのバルサム)、乳香と没薬をエジプトの方へ運ぶために運んでいました。
 兄たちが食事のパンを食べている時、イシュマエル人たちの隊商が来るのを見ます。この時、ユダが、ヨセフを殺しても何の益にもならないのだから、とイシュマエル人の隊商に売ることを提案します。そして兄たちはルベンとユダの提案に同意します。
 ヨセフを救ったのは、ルベンとユダでした。そしてユダは、長子権を継承することが阻害されるようなことは何もしていません。しかし兄たちは誰一人として、ユダが長子権を相続するとは思っておらず、ヨセフが受け継ぐと思っていたのです。

 
このことも、イエス様の時代に起こることを示唆していると併せ読むことができます。
 イシュマエル人たちの隊商が、香と乳香と没薬を運んでいて通りかかり、ヨセフを見つけることは、マタイ福音書に記されているイエス様の誕生の場面と酷似しています。また、ヨセフが水のない穴に放り込まれたことは、イエス様がイスラエルの民の手によって十字架に付けられ、十字架上で父なる神様の命の水を求められたことを思わせます。

 
この時、イエス様を十字架に就けたイスラエルの民はこう言ったのです。
「メシア、イスラエルの王、今すぐ十字架から降りるがいい。それを見たら、信じてやろう。」と。



37:28-36
 ところが、その間にミディアン人の商人たちが通りかかって、ヨセフを穴から引き上げ、銀二十枚でイシュマエル人に売ったので、彼らはヨセフをエジプトに連れて行ってしまった。ルベンが穴のところに戻ってみると、意外にも穴の中にヨセフはいなかった。ルベンは自分の衣を引き裂き、兄弟たちのところへ帰り、「あの子がいない。わたしは、このわたしは、どうしたらいいのか」と言った。兄弟たちはヨセフの着物を拾い上げ、雄山羊を殺してその血に着物を浸した。彼らはそれから、裾の長い晴れ着を父のもとへ送り届け、「これを見つけましたが、あなたの息子の着物がどうか、お調べになってください」と言わせた。
 父は、それを調べて言った。「あの子の着物だ。野獣に食われたのだ。ああ、ヨセフはかみ裂かれてしまったのだ。」
 ヤコブは自分の衣を引き裂き、粗布を腰にまとい、幾日もその子のために嘆き悲しんだ。息子や娘たちが皆やって来て、慰めようとしたが、ヤコブは慰められることを拒んだ。
 「ああ、わたしもあの子のところへ、嘆きながら陰府へ下って行こう。」 父はこう言って、ヨセフのために泣いた。
 一方、メダンの人たちがエジプトへ売ったヨセフは、ファラオの宮廷の役人で、侍従長であったポティファルのものとなった。
 
 
ヘブライ語原典では「ミデヤン人の商人たちが通った。そして彼らは(穴の中にいるヨセフを)引っ張った。そしてヨセフをその穴から上げた。そしてヨセフをイシュマエル人たちに銀二十枚で売った。彼らはヨセフをエジプトへ連れて行った。
 ルベンがその穴の所に戻った。すると見よ、その穴の中にヨセフがいない。彼は彼の服を裂いた。彼は兄弟たちの所に戻った。そして言った。『あの子が、彼がいない。私はどこへ行けばいいのか』。そして彼らはヨセフの長衣を取り、雄の山羊を殺して長衣をその血の中につけた。そして彼らは縞模様の長衣を彼らの父の所へ送りつけた。彼らは言った。『私たちはこれを見つけました。どうか、それがあなたの息子(ヨセフ)の長衣かどうか確認してください』。するとイスラエルはそれを確認し、言った。『私の息子の長衣だ。悪い野獣が彼を食べた。ヨセフはひどく引き裂かれてしまった』。そしてヤコブは彼の衣服を裂いた。そして粗布を彼の腰に着け、多くの日々を彼の息子のために喪に服した。すべての彼の息子たちと娘たちは、父を慰めるために立ち上がった。しかし、彼は慰められることを拒んで、言った。『まことに私は嘆き悲しみつつ、私の息子の所へ、陰府の方へ下ろう』。そして彼の父は彼のために泣いた。
 さてメダン人たちはヨセフを、エジプトのファラオの護衛長ポテパルに売った。」です。

 兄たちがヨセフのことを話し合っている間に、ミディヤン人の隊商がその場所を通りかかり、穴にいるヨセフを引っ張り上げ、イシュマエル人たちに奴隷として銀20枚で売り渡しました。
 ミディヤン人は、アブラハムの3人目の妻ケトラの子ミディヤンの子孫です。そしてイシュマエル人は、アブラハムとサラのエジプト人の女奴隷ハガルとの間に生まれたイシュマエルの子孫たちです。そして、ミディアン人とイシュマエル人は、互いに娶り合っていました。
 イシュマエル人たちは、ヨセフをエジプトに連れて行きました。ルベンは、兄弟たちの目を盗んで穴からヨセフを引き上げ父親のもとに無事に帰したいと重い、穴の所に行きましたが、ヨセフの姿はもうありませんでした。ルベンは動転し、嘆き悲しみます。このルベンの様子は他の憎しみに捕らわれた他の兄弟たちとは、明らかに異なり、まるでで自分の息子を失ったかのようです。
 一方、他の兄弟たちはヨセフが着ていた長衣を、殺した雄山羊の血に浸して、父イスラエルに、それがヨセフの長衣か確認して欲しいと行って、父を欺きます。血の付いた長衣を見たイスラエルは、ヨセフが悪い野獣に裂かれたと思って嘆き、永く喪に服し、誰の慰めをも受け入れることはありませんでした。
 ヨセフを穴から引き上げたメダン人たちはヨセフを、エジプト王の護衛長であり、宮廷に仕える高官ポテアルに売りました。「メダン人」は「ミディアン人」と同一視されています。

 この場面もイエス様の時代と合致します。イエス様を銀30枚で売り渡したのはユダです。ヨセフは穴に落ちましたが、死なず、後にエジプトの首相になりました。
 銀30枚と20枚の違いは何でしょう。20枚というのは、レビ記27:2に記されている、5歳〜20歳の人の終身誓願の値です。つまりヨセフはこの時、20歳未満だったのです。
 ルベンが穴の所に行って空だったのは、マグダラのマリアが墓地に行った時に空だったこと。しかし、この後ヨセフはエジプトの首相になって玉座に就くのです。
 
 イエス様を売り渡したユダは、もしかしたらヤコブの息子ユダがヨセフにしたことを真似たつもりだったのではないでしょうか。そうすることで、イエス様がローマの玉座に就くことになると勝手に解釈して。
 ところが、イエス様は十字架から降りて来られることはありませんでした。そのことを苦に、ユダは自殺したのです。
 ユダは、彼の傲慢な独自の解釈で、イエス様を売ったのではないでしょうか。しかしユダは、ヤコブの子ユダとは決定的に違うのです。ヤコブの子ユダがしたことは、彼とはまったく別の事でした。そしてヤコブの子ユダは、大きな使命を持ち合わせていたのです。
 だとすると、イエス様を銀貨30枚で売り渡したユダは、イエス様を殺させることが目的なのではなく、イエス様がユダの考えるダビデ王のような王を証明するために売り渡したとも考えられるのです。
 もしユダが、イエス様を殺すために売り渡したのであれば、どうして自殺する必要があるでしょうか。
 ユダは、イエス様が十字架の上で息を引き取るとは考えていなかったのではないでしょうか。そしてユダの考えとは異なり、イエス様は十字架上で息を引き取り、それを見たユダは自分が罪もない人を殺してしまったと嘆き、自殺したのではないでしょうか。
 しかし、イエス様は死んではいなかったのです。肉体を持ったまま復活されたのです。





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