43:1-7 この地方の飢饉はひどくなる一方であった。エジプトから持ち帰った穀物を食べ尽くすと、父は息子たちに言った。 「もう一度行って、我々の食糧を少し買って来なさい。」 しかし、ユダは答えた。「あの人は、『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、厳しく我々に言い渡したのです。もし弟を一緒に行かせてくださるなら、我々は下って行って、あなたのために食糧を買って参ります。しかし、一緒に行かせてくださらないのなら、行くわけにはいきません。『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、あの人が我々に言ったのですから。」 「なぜお前たちは、その人にもう一人弟がいるなどと言って、わたしを苦しめるようなことをしたのか」とイスラエルが言うと、彼らは答えた。 「あの人が、我々のことや家族のことについて、『お前たちの父親は、まだ生きているのか』とか、『お前たちには、まだほかに弟がいるのか』などと、しきりに尋ねるものですから、尋ねられるままに答えただけです。まさか、『弟を連れて来い』などと言われようとは思いも寄りませんでしたから。」 ユダは、父イスラエルに言った。 「あの子をぜひわたしと一緒に行かせてください。それなら、すぐにでも行って参ります。そうすれば、我々も、あなたも、子供たちも死なずに生き延びることができます。あの子のことはわたしが保障します。その責任をわたしに負わせてください。もしも、あの子をお父さんのもとに連れて帰らず、無事な姿をお目にかけられないようなことにでもなれば、わたしがあなたに対して生涯その罪を負い続けます。こんなにためらっていなければ、今ごろはもう2度も行って来たはずです。」 ヘブライ語原典では「そして、その地の飢饉がひどかった。そして彼らがエジプトから持って来た穀物を食べ終えた時、彼らに彼らの父は言った。『再び行け、少しの食糧を私達のために買え』と。そしてユダは彼にその人は私たちに厳しく警告したと言って(次のとおり)言った。『【あなた方は私の顔を見るな。あなた方と一緒にあなた方の弟なしで】と。もしあなたが私たちの弟を私たちと一緒に遣わすつもりがあるならば、私たちは下ろう。そしてあなたのために食糧を買おう。しかし、もし遣わすつもりがないならば、私たちは下らない。なぜならあの人が私たちに【あなた方は、あなた方と一緒にあなた方の弟なしで、私の顔を見るな】と言ったからです』。 そこでイスラエルは言った。『なぜ、あなた方は私を苦しめるのか。さらにあなた方に弟がいる、とその人に話すことで。』 そこで彼らは言った。『あの人は私たちにしきりに尋ねたのです。そして私たち一族について【まだあなた方の父は生きているか。あなた方に兄弟がいるのか】と言って。それで私たちはこれらの言葉にしたがって彼に話しました。どうして私たちは彼が【あなた方はあなた方の弟と共につれて下れ】ということを、確かに知る(でしょう)か』 ユダは彼の父イスラエルに言った。『この少年(ベニヤミン)を私と共に(エジプトに)遣わせてください。そして私達は立ち上がろう。そして行こう。そして生きよう。そして私たちは死なない。あなたも私たちも、私達の子供もまた。私自らが、この私が彼を保障します。もし、私があなたの所に彼を連れて戻らなかったなら、私の手から彼を(彼の代償を)要求してください。そしてもし彼をあなたの前に見せなかったなら私はあなたに対して、すべての日々(生涯)その罪を負いましょう。なぜなら、もし私達がためらわなければ、すでに二度、私たちは(エジプトに)行けたことでしょうから。』」です。 カナンの地の飢饉はひどくなり、息子たちがエジプトで買ってきた食糧を食べ終えてしまった時、イスラエル(ヤコブ)は息子たちに再度エジプトに下って食糧を買ってくるよう命じました。 するとユダは、エジプトで食糧を買うためには一番年下の弟を連れて行かなければ、司政者の面前に出ることを許さないと命じられたことを話しました。繰り返し『お前が話した弟を連れてこなければ、お前たちは私の面前に立つことを許さない』と言われたと言ったのです。なぜならそれほど厳しく、ユダと兄弟たちは司政者に言われていたからです。 それを聞いたイスラエル(ヤコブ)は、どうして弟がもう一人いるなどと言って、私を苦しめるようなことをしたのか、と問います。すると彼らは、「あの人が、我々のことや家族のことについて、『お前たちの父親は、まだ生きているのか』とか、『お前たちには、まだほかに弟がいるのか』などと、しきりに尋ねるものですから、尋ねられるままに答えただけです。まさか、『弟を連れて来い』などと言われようとは思いも寄りませんでしたから」と答えます。 ここで注意が必要です。 ユダが言ったことと別に、「彼ら」が言った、という「彼ら」とは、ユダ以外の兄弟と考えるべきなのです。 そうでなければ、ユダが言った、という言葉も「彼らが」で差し支えないはずです。 ところが、あえてユダが言ったことと、「彼ら」が言ったことが、別々に記されているのです。そして、その語っている内容をよく読んで気付いてほしいのです。 ユダは、イスラエル(ヤコブ)にできる限り正確に「事実」を伝えようと努めていることが分かります。この「事実」をできるだけ正確に伝えようという話し方の特徴は、父や祖父イサク、そして祖母リベカとそっくりで、ユダがそれを忠実に継承している人物であることが、よく分かるのです。 一方、「彼ら」の話は、どうでしょうか。責任転嫁です。自分たちに責任はないと父に訴え、エジプトの司政者(ヨセフ)のせいにし、一生懸命に責任逃れをしています。 これに続けてユダは、父イスラエルに次のように言っています。 私を信頼して弟ベニヤミンを託して欲しい。なぜならすでに食糧は尽き、このまま迷い続けていては一族が死に絶えるのを待つようなものだからです。このベニヤミンをユダと共にエジプトに遣わせてくださるならば、ユダ自身がベニヤミンのことを保障する、と。 もしベニヤミンと連れて戻らなかったならば、その賠償を要求して欲しい、もしベニヤミンを連れて戻ることがなければ、ユダの生涯をかけてその償いをする、というのです。 ユダは、ここで、自分が責任を取るからと言って、エジプト行きを申し出ているのです。 ここで前の章のルベンの言葉を思い出してほしいのですが、42章37節でルベンは、自分が責任を取るからベニヤミンを任せて欲しいと申し出ています。 ルベンは長子です。父の床を汚したため長子権は失っていますが、長子としての資質を示す言葉です。 このとき、父はルベンの進言を退けましたが、ユダはルベンの意志を引き継いで43章で、自分が責任を持つから、と進言しているのです。 このことは、ルベンの後に長子権を引き継ぐ資質をユダが有していることを示しています。ルベンとユダは、兄弟たちがヨセフに手をかけようとした時にも、それを止めようとしています。 このことは何を示唆しているでしょうか。聖書のこの部分を読む人の多くは、神様の使命を帯びるのはヨセフであり、長子権を受け継ぐにふさわしいのはヤコブとラケルの長子ヨセフだと思い込んで読んでしまいます。ヨセフの生涯が劇的ですので、余計にそう読んでしまうでしょう。 そして「兄弟たち」もそう思いました。だから兄弟たちはヨセフに嫉妬したのです。 しかし、心で聖書を読む人は、別のことに気付きます。長子権を継承するにふさわしいのは、ユダなのです。 多くの人がそのことに気付かないように、サタンもまた気付かなかったことでしょう。まさかユダに長子権が引き継がれるとは。しかし、それが神様の知恵なのです。真実は、盲目な目からは隠されいるのです。心で聖書を読む人だけが、真実を読み取ることができます。 そして、ユダは資質として長子たるものを持っているだけでなく、ルベンに続くシメオンとレビはシケムの殺戮で2人も長子権を受け継ぐ資格を失っていますので、順番から言っても長子権を受け継ぐのはユダなのです。実際、イエス様は、このユダの子孫からお生まれになります。 43:8-14 すると、父イスラエルは息子たちに言った。 「どうしてもそうしなければならないのなら、こうしなさい。この土地の名産の品を袋に入れて、その人への贈り物として持って行くのだ。乳香と蜜を少し、樹脂と没薬、ピスタチオやアーモンドの実。それから、銀を二倍用意して行きなさい。袋の口に戻されていた銀も持って行ってお返しするのだ。たぶん何かの間違いだったのだろうから。では、弟を連れて、早速その人のところへ戻りなさい。どうか、全能の神がその人の前でお前たちに憐れみを施し、もう一人の兄弟と、このベニヤミンを返してくださいますように。このわたしがどうしても子供を失わねばならないのなら、失ったもよい。」 ヘブライ語原典では「彼らの父イスラエルは彼らに言った。『もし、そうならば、それではこれを行え。この地の特産品をあなた方の入れ物に取りなさい。そしてその人に贈り物を持って下りなさい。少しの乳香と少しの蜜、香料と没薬とピスタチオとアーモンドの実を。そして2倍の銀をあなたの手に取り、そしてあなた方の袋の口に戻されたあの銀を、あなた方の手で返しなさい。たぶんそれは間違いなのだから。そして、あなた方の弟を取れ(連れて行きなさい)。そして立ち上がれ(出発しなさい)。その人の所に戻りなさい。全能の神が、その方の面前であなた方に憐れみをお与えになりますように。そして彼があなた方にあなた方の他の兄弟を遣わされるように。そして、私の子を失う時には、私はまたベニヤミンを、私の子を失うのだ」です。 ユダの説得によって、イスラエル(ヤコブ)はベニヤミンを伴って息子たちがエジプトに食糧を買いに行くことを承諾しました。エジプトの司政者に敬意と好意を表すために、カナンの地の最上の特産物とお土産の数々を携えるよう、また以前、食糧を買いに言った際、それぞれの袋に返されていた穀物の銀を自分たちの手で返すよう、2倍の銀を準備するよう命じました。人質になっているシメオンと、ベニヤミンを失うことがないよう、そして、できることの最善を尽くして、これで子供たちを失うなら失ってもよいと思えるだけの、最善を尽くしたのです。 43:15-25 息子たちは贈り物と二倍の銀を用意すると、ベニヤミンを連れて、早速エジプトへ下って行った。 さて、一行がヨセフの前に進み出ると、ヨセフはベニヤミンが一緒なのを見て、自分の家を任せている執事に言った。「この人たちを家にお連れしなさい。それから、家畜を屠って料理を調えなさい。昼の食事をこの人達と一緒にするから。」 執事はヨセフに言われたとおりにし、一同をヨセフの屋敷へ連れて行った。一同はヨセフの屋敷へ連れて来られたので、恐ろしくなって、「これはきっと、前に来たとき我々の袋に戻されていたあの銀のせいだ。それで、ここに連れ込まれようとしているのだ。今に、ろばもろとも捕えられ、ひどい目に遭い、奴隷にされてしまうにちがいない」と思った。彼らは屋敷の入り口のところでヨセフの執事の前に進み出て、話しかけて、言った。 「ああ、ご主人様。実は、わたしどもは前に一度、食糧を買うためにここへ来たことがございます。ところが、帰りに宿で袋を開けて見ると、一人一人の袋の口のところにそれぞれ自分の銀が入っておりました。しかも、銀の重さは元のままでした。それで、それをお返ししなければ、と持って参りました。もちろん、食糧を買うための銀は、別に用意してきております。一体誰がわたしどもの袋に銀を入れたのかわかりません。」 執事は、「ご安心なさい。心配することはありません。きっと、あなたたちの神、あなたたちの父の神が、その宝を袋に入れてくださったのでしょう。あなたたちの銀は、このわたしが確かに受け取ったのですから」と答え、シメオンを兄弟たちのところへ連れて来た。執事は一同をヨセフの屋敷に入れ、水を与えて足を洗わせ、ろばにも餌を与えた。彼らは贈り物を調えて、昼にヨセフが帰宅するのを待った。一緒に食事をすることになっていると聞いたからである。 ヘブライ語原典では「そこでその人々はその贈り物を取り、2倍の銀を彼らの手に取り、そしてベニヤミンを(連れ)、立ち上がった。そしてエジプトに下った。そしてヨセフの前に立った。 ヨセフは彼らと一緒にいるベニヤミンを見て言った。『この人たちを家に連れて行け。そして動物を屠って、用意せよ。なぜなら、私と一緒にこの人々が昼食を食べるからだ。』 そしてその人はヨセフが言ったとおりに行って。そしてその人はヨセフの家にその人達を連れて行った。しかし、その人達は彼らがヨセフの家に連れて行かれたことを恐れた。そして言った。『初めに、私達の袋に戻っていたあの銀の事について(あの銀のことは)、私たちの上に転がりこむために(倒れる、自ら落ちるために)、そして私達の上になだれ込むために、そして私たちをろば達もろとも奴隷として捕まえるために(起こったに違いない)』。それで彼らはヨセフの家で高位にある人に近づき、その家の入口で彼に話した。そして彼らは言った。『ご主人さま、私たちが最初、食糧を買うために確かに(エジプトに)下りました。しかし、私たちが宿に来た時でした。私たちが私たちの大きな袋を開けると、なんとそれぞれの大きな袋の口に私たちの銀が、それぞれのその重さのままあるではありませんか。そして私達はそれを私達の手でお返しします。そして、私達は食糧を買うために私達の手で別の銀を持って下って参りました。私たちは誰が私達の大きな袋の中に私達の銀を置いたのか、知りません』。すると彼は言った。『恐れることはありません。あなた方に平安がありますように。あなた方の神が、あなた方の父の神が、あなた方に宝を、私の所に来たあなた方の銀をあなた方の大きな袋にお与えになったのです』。そして彼は彼の所にシメオンを出した(連れて来た)。そしてその人はその人達をヨセフの家に連れて行った。そして水を与えた。そして彼らは彼らの足を洗った。そして彼は彼らのろば達に飼料を与えた。そして彼らは、昼にヨセフは来るまでに贈り物を用意した。なぜなら彼らはそこでパンを食べることを聞いたからだ。」です。 父イスラエルがベニヤミンを連れてエジプトに下ることを承認したので、兄たちは父の言葉に従ってカナンの地の最上の特産物と贈り物、そして以前、それぞれの食糧の袋に返されていた分の銀を返すために、2倍の銀を用意しました。そして弟ベニヤミンを伴って、彼らはエジプトに出発したのです。 彼らはエジプトに着き、ヨセフの面前に立ちました。ヨセフは自分の家に彼らを招き、食事を用意するよう側近たちに命じました。ヨセフの家に連れて来られた兄たちは、スパイ容疑をかけられた自分たちがヨセフの家に連れて来られた理由がわかりませんでした。エジプトの司政者に歓待されるはずもなく、これは罠ではないかと恐れます。以前、自分たちの袋に穀物の銀が戻されていたのは、ヨセフの家に銀を返しに訪れた時には、彼らのろばもろとも捕え、エジプトの奴隷にしようとする策略なのではないかと恐れたのです。 スパイ容疑ばかりではなく、盗みの容疑もかけられるのではないかと恐れ、彼らはヨセフの家に入る前に入口で、彼の執事に話します。前回、食糧を買いにエジプトに来た際、支払った銀が戻されていることをカナンへの帰路、宿で知ったこと。それを返すために今回は2倍の銀を持って来た、と。すると執事は、彼らの神、彼らの父の神が袋に返されたのでしょうと好意をもって返答し、それまで拘留されていたシメオンを彼らの前に連れて来ました。 彼らは家に招き入れられ、歓待の意を込めて足を洗う水が用意され、ろばには飼料が与えられました。側近から、昼には家に戻るエジプトの司政者が一緒に食事を予定していることを知らされたので、彼らは司政者のためにカナンの地から用意してきた贈り物と返すための銀を用意しました。 43:26-34 ヨセフが帰宅すると、一同は屋敷に持って来た贈り物を差し出して、地にひれ伏してヨセフを拝した。ヨセフは一同の安否を尋ねた後、言った。 「前に話していた、年をとった父上は元気か。まだ生きておられるか。」 「あなたさまの僕である父は元気で、まだ生きております」と彼らは答え、ひざまずいて、ヨセフを拝した。 ヨセフは同じ母から生まれた弟ベニヤミンをじっと見つめて、「前に話していた末の弟はこれか」と尋ね、「わたしの子よ。神の恵みがお前にあるように」と言うと、ヨセフは急いで席を外した。弟懐かしさに、胸が熱くなり、涙がこぼれそうになったからである。ヨセフは奥の部屋に入ると泣いた。やがて、顔を洗って出て来ると、ヨセフは平静を装い、「さあ、食事を出しなさい」と言いつけた。食事は、ヨセフにはヨセフの、兄弟たちには兄弟たちの、相伴するエジプト人にはエジプト人のものと、別々に用意された。当時、エジプト人は、ヘブライ人と共に食事をすることはできなかったからである。それはエジプト人のいとうことであった。兄弟たちは、いちばん上の兄から末の弟まで、ヨセフに向かって年齢順に座らされたので、驚いて互いに顔を見合わせた。そして、料理がヨセフの前からみんなのところへ配られたが、ベニヤミンの分はほかの誰の分より五倍も多かった。一同はぶどう酒を飲み、ヨセフと共に酒宴を楽しんだ。 ヘブライ語原典では「そしてヨセフがその家に来た。そして彼らは彼の家に、彼の手の中ある贈り物を彼(ヨセフ)に持って来た。そして彼らは彼に地にひれ伏した。そして彼は彼らに平安を尋ね、そして言った。『あなた方が言った年老いた父上は平安か。彼はまだ生きいるか』。 そして彼らは言った。『あなたの僕の私たちの父は、まだ生きています』。そして彼らは頭を下げた。そしてひれ伏した。そして彼は彼の目を上げて、彼の母の息子、彼の弟のベニヤミンを見た。そして言った。『これがあなた方が私に言った一番年下のあなた方の弟か』。そして彼は言った。『私の子よ、神があなたを恵むように』。そしてヨセフは急いだ。なぜなら、彼の弟への情けは熱くなったからである。そして彼は泣くことを願った。そして部屋に入った。そしてそこで泣いた。 そして彼は彼の顔を洗った。そして出た。そして我慢した。そして言った。『パンを置け』。それで彼らは彼に彼だけに置いた。そして彼らには彼らだけに。そして彼と共に食べる者たちであるエジプト人たちには彼らだけに(パンが置かれた)。なぜならエジプト人はヘブル人たちと共にパンを食べることが出来なかったからである。なぜならそれは、エジプトにとって避けたいことだったからである。 そして彼らはヨセフの前に座った、長子は長子として、そして若い者は若い者として。そしてその人々は驚いて、それぞれが彼の隣人を見た。そして彼の顔から彼らに分け前を運んだ。そしてベニヤミンの分け前は、彼らみんなの分け前よりも5倍多かった。そして彼らは飲んだ。そして彼と共に酔っぱらった。」です。 ヨセフの執事は、兄たちとベニヤミンをヨセフの家に招き入れました。彼らのために足を洗うための水が用意され、彼らのろばには飼料が与えられました。これらのことからヨセフの執事は、彼らを歓待するよう命じられていたことがわかります。 兄たちはエジプトの司政者が昼食を共にする予定で、家に戻ってくることを聞かされていたので、彼のために、父イスラエルに命じられ持って来たカナンの地の最上の特産物と贈り物の数々、そして以前、それぞれに戻されていた穀物の代金の銀を用意していました。昼食の前に、贈り物をヨセフに渡そうと考えたからです。 やがて昼になり、ヨセフは家に戻ってきました。兄たちはヨセフに贈り物を持って来て、ひれ伏して敬意を表し、丁重な挨拶をしました。 するとヨセフは父の安否を尋ね、13年ぶりに再会したベニヤミンの姿に目に留めて言いました。『わたしの子よ。神の恵みがお前にあるように』と。ヨセフは弟ベニヤミンが兄たちにいじめられていないか、ずっと心配だったことがわかります。ヨセフは急いで席を外しました。それは弟の姿を見て懐かしかったこと。また兄たちが、父イスラエルがかわいがっている弟ベニヤミンを虐待していないことを確認し安堵し、涙がこぼれそうになったからです。 ヨセフは奥の部屋に入って泣きました。そこにはたくさんの気持ちが込められていたことでしょう。同じ母の弟ベニヤミンに対する懐かしさの思い、悔い続けてきたであろう兄たちへの憐れみの思い、そして年老いた父が可愛がっているベニヤミンをどんな思いを抱いて兄と共にエジプトに送り出したかをヨセフは思い、泣かずにはいられなかったのです。 やがて顔を洗って彼らの前に戻ったヨセフは平静を装って彼らの前に食事を用意させます。ヨセフの家の僕たちはヨセフの分、兄弟たちの分、彼らの食事を相伴するエジプト人たちには彼らの分として、ぞれぞれ配膳されました。エジプト人とヘブル人が共に食卓について、食事を供することはなかったからです。それほどにエジプト人にとってヘブル人の地位は低く、厭う人種だったからです。 兄弟たちは案内され、ヨセフに対面して食卓に着きました。その席順が長子は上座に、そして年齢に従って食卓の席が決められていることに彼らは顔を見合わせて驚きました。エジプトの司政者は、自分たちの年齢のことまで知っていると知ったからです。 ヨセフの前から配られた食事は、ベニヤミンの分が他の人々の5倍も多く配膳されました。それはヨセフのベニヤミンへの再会の歓びが込められたものでもありましたし、それを見た兄たちがどのように感じ、振る舞うかをヨセフは知りたかったからです。兄たちは年下の弟が、エジプトの司政者に歓待されることを共に歓び、彼らは飲み、互いに酔っぱらいました。 |